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■■ 00‐01の現場 - 観戦の記録 - ■■

 18 MAR 2001 <Sun>                                                       □ 00-01 観戦の記録一覧へ □
Planica / Slovenia   WC 第21戦 (最終戦) FH

  雨上がりの朝、部屋の天窓から見える山の端にはまだ靄がたなびいている。2000-01ワールドカップ最終戦。プラニッツァに天気の神様は味方してくれたようだ。
観客の出足も早く、予想通りポーランド国旗が林立している。朝の9時から相当に出来あがっている酔っ払いもいれば 記念写真に収まる家族もいる。プラニッツァのジャンプ会場は大きなお祭り、春を告げる祝祭の場なのだ。人と人の隙間からなんとか台全体と電光掲示板・ビデオスクリーンが見えるいつもの位置に立つ。
予選開始、エントリーは65名。台の雪はなんとか健在、 しかし黒っぽくなった個所はますます増えている。プリモシュ・ペテルカ、かつての総合王者が開催国枠の一人として飛ぶ。オリンピック金メダリストにして WC総合優勝のタイトルも併せ持つトニ・ニエミネンは長い長い雌伏の時を経て ついに今季復活を遂げた。二人とも一般社会では新人の部類にも入る若さだけれども 想像もつかない栄光を手にしたあとで、再び一段ずつ階段を昇る作業を行っているのだ。ただひとこと 「がんばれ!」 と言いたい。

観客スペースでは感じられないが 上空には少し風があるようで吹き流しが動くのが見える。太陽が出て、ジャンプ台の白い雪の上にジャンパーの黒い影が映る。オーベルストドルフと同様に 120−30m付近から影がどんどん離れていくと190mを超える、ずっと平行についてくる影のジャンプは185mのK点に到達するのがほぼ限界のようだ。雄太くん・仲村くん 予選通過は まず大丈夫。日本3人目が46番船木くん。名前がコールされるとひときわ大きな歓声が沸き起こる。スタート・踏み切る・100mを超え 問題の120m付近、身体全体が浮き上がるように見える。 行ける!影が離れていく、距離が伸びていく。着地が乱れたものの190m級。予選通過の喜びもさる事ながら 良いジャンプが出来たのではないかと、そちらがまずは嬉しい。久し振りに感じた、身体の下に空気の手が差し入れられたような落ちないジャンプ。今季最長? ブレーキングトラックでの様子は人垣で全く見えない。が 会場内の拍手が彼に向かって贈られている、「かつての王者に敬意の拍手を」 とアナウンスに促されたガルミッシュでの試合とは違う いまのジャンプに対する観客からの賞賛だ。(12月31日予選不通過、その言い方が悔しくて拍手するもんか と意地になった。現役選手に対する拍手は 良いジャンプをした時だ。)
原田・吉岡・みやじくんも予選はなんなく通過、予選免除の15位中この試合への参加選手は10名だけ、実際にはシュミット・マリシュの2選手は予選回避したので最後から2人目に葛西の紀ちゃんが飛んだ。上位選手中では乗り切れていない印象が強い。本番でどうか。

一昨日のように日差しが強くなってきたが 上着を脱ごうにも場所に余裕がないため 暑さを我慢しながら 1本目を迎える。最初のペテルカから距離が出る。飛ばせ過ぎでは?と思っていたらアラン・アルボーンが209mを飛んで中断、キャンセル。ゲートを下げての再開は雄太くんが一番手、踏切りから違ってしまったのか まったく届かない。船木くん同様に今季予選不通過も多かった二コラ・デスムくん (白馬に乗った王子様、と呼んでいる) 最後の日にやっと良いジャンプが出た。依然好調はタミ・キウル、マルティン・コッホ。イゴール・メドヴェド Igor Medved (SLO) は先日のトロンハイムで1本目2位、2本総合で3位はフロックなんかじゃないと 地元でアピールするかのような大ジャンプに観客は大喜び。 ドゥフナーの直後が船木くんだ。 シュプール横に設置された集音マイクが拾う、サッツを蹴り出す音が 「ジャッ」 と聞こえる。120mあたりでふわっとしたように見えたので よし、いった!と思ったがなぜか浮かずにそのまま 176mに届いたに過ぎない。残りの人数を考えると2本目に進むのはほぼ不可能・・・ 原田さんも厳しく、吉岡くんは問題外の距離、みやじくんが確実に通過のジャンプ。こうして見ると昨日の団体戦はよく4人が数字を揃えたものだと思う。

トミ・インゲブリクセンが予選に続いてバカ当たりで久々に 「Lotto (宝くじ) Tommy」 の面目躍如、ゴルトベルガーそれには及ばず、葛西の紀ちゃん更に及ばず、日本陣で最高の順位はみやじくんとなるも 入賞には厳しい順位での折り返し。シュミットが1位を確保して今日まででフライング戦総合1位のマリシュを待つ。年間王者をさらわれた今、シュミットに残された可能性は フライング王者奪取。会場中のポーランド国旗が打ち振られ 絶叫にも似た 「アダム・マリシュ」 の連呼の中、イエロービブのマリシュが飛ぶ。僅かに及ばない。4位での折り返し、点差のメートル換算では約5m位なので十分逆転可能な差ではある。キャンセルになった下位選手の飛び直しを終え、2本目まで30分のインターバルが告げられる。指を折って 距離の数字だけで順位を推定していたが 船木くんは恐らく37位くらいだろう。ある意味、今季を象徴するような展開になったと言える。練習・予選・本戦を 一定した高い水準でまとめられず 一日の内だけでも折れ線グラフのように波が出来てしまう。それでも課題は課題として、最後の試合は2本飛ばせてあげたかった。それとも悔しい気持ちを全部練習にぶつける為の天の配剤と思おうか。

インターバルに入った直後から風になってきた。スポンサーの旗もジャッジタワー上の風船も吹き流しも強風を受け始めている事が如実に分かる。1本目で時間がかかったのですでに午後になっているのだ。このプラニッツァで 一旦吹き始めた風が止むことは考え難い。このまま中止になるだろう。様子を見るためのインターバル延長が告げられたが意味の無い事。もうシュミットのフライング逆転総合優勝は決定だ。1本目の結果がもし マリシュの1位、僅差でシュミットが2位で追う展開だったらどうだったんだろう。インターバルが短くなっていたかもしれない?
13時、強風の為 試合の続行は不可能とのジュリーの判断により 試合は1本で終了。これもまた今季を象徴する試合となってしまった。競技運営の悪さや作為的もしくは誘導?と不信を抱かせる試合展開。悪気象条件 (特に雪不足・強風)。すべてがここにあるではないか。これまで色々あっても せっかくの最終戦、せめてすっきりとした形で終わって欲しかった。

表彰式が始まる。この試合、フライング総合、獲得賞金?(注; のちにフライング抜きの順位と判明)、WC総合、国別の2000−01王者は シュミット・シュミット・マリシュ・マリシュ・フィンランド。表彰に係わるアナウンスは何故かスロヴェニア語のみ、年間の締めくくりでこれはいただけない。場内の観客には無関係な場所で行われているので (遠すぎて見えない) 良いとでも? ともあれ 今季WCはこれで終了。雪不足の為の中止で試合数が少なく不完全燃焼の感が強いが 今年もたくさんのひとに助けられてここまで来ることが出来た。終わってしまえばあっけない。(有限のものはなんでもそうだ) 楽しみに楽しみに迎えた第1戦が4ヶ月も前の事だとは、ましてやプラニッツァでシーズン最後のグリューワインを飲んだのが1年も前の事だとは思えない。これからの7ヶ月、(雪上での) 試合のない間もそう思えば待つことが出来る、か。

そんな風にはとても考えられない。
毎週末の試合の為だけに組み立てられる日々が終わってしまった喪失感は日常の生活に戻っても なかなか消えない谷間の残雪のよう。どこかの記事の片隅に 来たるシーズンに向けてのトレーニングが始まったと書かれるのを目にする頃に、終わってしまった冬にやっと整理をつけて 国内サマーが始まり来季のWC日程が固まると もう開幕が待ちどおしくてたまらなくなる。合宿・サマーグランプリと そう多くはない情報に一喜一憂しながら欧州の雪の便りを待つ秋を迎え、そして再生の季節となる11月末、また毎週 どこに泊まるか どうやってそこまで行くかに頭を悩ませながら続ける冬の旅の日々に入っていく。

2001年3月18日、今年の冬の終わりの日。明日から、春。

  

(2001年3月18日 Planica この項 了)
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初稿 <Funakist's Fan Voice> 18.MAR.2001
改稿 17.JUL.2001

 

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