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□ 26 FEB 2001 <Mon> □ □ 00-01 観戦の記録一覧へ □ |
Lahti / Finland ノルディックスキー世界選手権 大会終了後 |
世界選手権終了の夜に然々と考えたことなど・・・ 昨季につづいて 今季も日本のジャンプは不振と言われる。 マスコミの常套句のように 「最悪の状態」 なのだろうか? 「低迷」 しているのだろうか? 同じ五輪後、ということで札幌の時と単純に比べれば 少なくとも競技結果は悪くないはずだ。当時とは比較しようも無いほど 現代のジャンプ (のみならず スポーツ全般) は強化資金・体制は充実しているだろう。技術・用具の進歩・開発もめまぐるしく 各国間の競争は一層激しくなっている。その中で自国開催のオリンピックに向けて 「オペレーション・ゴールド」 を企て、見事に実現させた日本チームに少しばかりの谷間 (強化資金の多寡も含めて) があったとしても 不思議ではないと考える。 もちろん このまま低値安定状態で終わるなどとは思ってもいないからこそ そう思うのだが、マスコミの悲観論やバッシング報道はスポーツを前進させる一助にもならないどころか 後退させんが為に報道をするのかとまで聞いて見たくなる。 (もろ手を上げての賛美から一転 攻撃というのは 高橋尚子選手の例が最近では最も顕著だ) 新聞も雑誌も、少しでも興味のある人が記事を読む。何の興味もない記事は自然と飛ばすだろう。「最も・悪い」「低く・迷っている」 などと書かれ続ける競技に対し 長野で興味を持ち始めた一般読者は 次の冬にはもう見向きもしないかも知れない。書かれた記事に簡単に感化される方が悪いだろうか? だが情報には 「刷り込み」 の作用が確かに働く。公にする情報に記された一語・一文がどれだけ潜在的な影響力を持っているか 発信者はこの認識に常にたちかえるべきであり、最低限 対象にシンパシーを持っていると感じられる文章 (記事) であって欲しいと思う。 競技者が現役でいる間 好不調の波は常に訪れる。競技者集団としてのチームも同様だ。ジャンプは去年・今年とWCでの位置が (長野前後の年よりも) 悪いので もうマスコミは掌を返したように扱わないばかりか 記者も派遣しない。(ウィンタースポーツ全般に通信社配信の記事ばかりが目立つ。長野が終わってしまえば 人々の関心もないということなのか。) プレ・オリンピックイヤーの今年 こんなに知らん顔を決め込んでいて 来年のソルトレイクシティ・オリンピックはどのくらいの扱いをするんだろう。そして結果が良かった時・悪かった時 何を基にどう表現するのだろうか。 決して長くは無い選手生命の中で 自分の国で催す大会に出場出来るチャンスに巡り合わせる幸運。しかし そこで優勝する、というのがどんなに大変なことなのか。本命視されていたフィンランドのジャンプは結局個人・団体とも金がなかった。 (大会全体18競技種目で金3銀6銅3) 国技、とも言える距離競技では 信じられないことにドーピング違反者を複数出してしまった。(選手個人の意思、あるいは スキー連盟主導に拠るものか 真相は明らかにされていない。) ラハティは2013年のノルディックスキー世界選手権開催に立候補する意思があるらしい。 その頃には今年世界選手権を戦ったジャンプ選手は誰もいないだろう。コーチになっている者もいるかもしれない。その時 彼(ら)は何を思い出すだろう。金メダルを期待されることへの誇りと重圧。最後は自分との戦いでしかないという、いつの試合でも感じていたはずのことを 鮮やかに浮かび上がらせた自国での大会。 ひと時の幸運と永遠とも思えた不運。それらのすべてが彼(ら)の、そしてあとに続く者達の糧となることを祈る。 そして改めて 長野を思う。 船木くんのノーマル銀、ラージ金、団体金というのは 本当に奇跡のように素晴らしい結果だったのだ、と。 得難い経験をした選手もそれを目の当たりに出来たわたくしたちも なんという幸せだったか。 あれを当たり前のように思ってはいけない。 ものを測る基準にしてはいけない。 そして いつまでもすがりついてもいけない。 ただ 美しい奇跡に出会えたことを感謝している。 美しい記憶を贈られたことをいつまでも忘れない。 次のドアの向こうに 新しい景色を見せてもらうのを楽しみにしている。 長い上り坂にかかっているのなら 登りきるまでは ただがんばれ、と。 (付記;フィンランドのメダル獲得数はドーピング違反罰則により減少しているが確定数は不明。英雄ミカ・ミュルレは無実を訴えて現役を引退。また2001年6月になって 選手権当時のフィンランド距離ヘッドコーチが薬物密輸の疑いで逮捕された。同7月 IOCは2002年ソルトレイクシティ・オリンピックにおいて 従来メダル獲得選手だけに対して行われていたドーピング検査を参加全選手に実施することを決めた。) (2001年2月26日 Lahti この項 了) |
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初稿 25.FEB.2001 |
改稿 17.JUL.2001 |
スキージャンプ・現場主義